家賃収入がある人も年末調整は必要?確定申告との違いと節税対策を解説

トチカツplus

2025.12.11

この記事のライター・監修者

竹内英二

不動産鑑定士

竹内英二

サラリーマンであれば、アパート経営などで家賃収入がある人も年末調整は必要です。 また、不動産所得が20万円を超える人は、年末調整だけでなく確定申告も行わなければなりません。 年末調整は会社が手続きをしてくれますが、確定申告は自分で行わなければならないため、家賃収入のある人は確定申告についても知っておくことが必要です。 では、年末調整と確定申告にはどのような違いがあり、なぜ両方を行う必要があるのでしょうか。 この記事では「家賃収入と年末調整」について解説します。

Point

  • サラリーマンであれば家賃収入があっても年末調整は必要
  • 不動産所得が年間20万円を超える場合、サラリーマンでも確定申告が必要
  • 不動産所得を節税するには、必要経費をしっかりと計上することが鉄則

目次

  1. 家賃収入がある人でも給与所得者なら年末調整は必要
  2. 不動産所得が20万円を超えると給与所得者でも確定申告が必要
  3. 年末調整と確定申告の違い
  4. 不動産所得の計算に必要な項目
  5. 確定申告でできる節税ポイント
  6. まとめ

家賃収入がある人でも給与所得者なら年末調整は必要

最初に年末調整の概要について解説します。

年末調整とは

年末調整とは、1年間の給与総額が確定する年末に、その年に納めるべき税額を正しく計算し、それまでに徴収した税額との過不足額を求めて差額を精算する手続きです。
年末調整は、給与の支払者である会社側が行う作業です。 会社側が行う源泉徴収の過程で年末調整が行われます。

源泉徴収とは、会社側が給与の支払いの際に所定の所得税を天引きして徴収し、納税者に代わって納税する制度のことです。 源泉徴収は、まずは1年間に事情の変化がないことを前提に作成されますが、実際には給与受給者は1年の間に扶養親族の数が変わったり、生命保険に加入したりするなど、変化が生じることがあります。

1年の間で給与や控除すべき内容が変わったら、年末にこれらの過不足を調整するのが年末調整です。 年末調整の具体的な計算作業は会社が行いますが、給与受給者は年末までに自分の扶養親族などの状況や保険料の支払い状況などを会社側に申告する必要があります。

年末調整の対象者

年末調整の対象者は、給与所得者(サラリーマン)です。
具体的には、以下のようなケースが該当します。

  • 1年を通じて勤務している人
  • 年の途中で就職し、年末まで勤務している人
  • 年の途中で退職した人(死亡などを含む)
  • 年の途中に海外転勤し、非居住者になった人

副業で家賃収入を得ているサラリーマンも、1年を通じて勤務している場合は年末調整の対象となります。 つまり、不動産所得があっても、会社員であれば年末調整は必要ということです。

不動産所得が20万円を超えると給与所得者でも確定申告が必要

家賃収入がある人は、年末調整とは別に確定申告も必要となります。
この章では、確定申告について解説します。

不動産所得とは

不動産所得とは、個人がアパート経営や不動産投資で得られる所得のことです。 不動産所得は家賃収入そのものではなく、家賃収入から必要経費を差し引いた利益を指します。

▼不動産所得の計算方法

不動産所得 = 収入金額 - 必要経費

確定申告とは

確定申告とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得の金額と、それに対する所得税などの額を計算して、税額を確定させる手続きです。
申告期間は、原則として翌年の2月16日から3月15日までで、納税地の所轄税務署に提出します。

確定申告と所得税の納付は売却した翌年の2月16日~3月15日に行う

確定申告が必要な給与所得者

原則として、年末調整を受けている給与所得者(サラリーマン)は確定申告不要です。
ただし、以下の要件に該当する場合は、給与所得者でも確定申告が必要になります。

▼給与所得者で確定申告が必要な主なケース

  • 1ヶ所から給与を受けていて、20万円超の給与所得以外の所得がある人
  • 給与所得が2,000万円を超える人
  • 2ヶ所以上から給与を受けている人
  • その他、一定の要件を満たす同族会社の役員など

サラリーマンでも、不動産所得が20万円を超える場合は確定申告が必要です。 つまり、年末調整とは別に確定申告を行う必要があります。

年末調整と確定申告の違い

年末調整と確定申告の違いをまとめると、下表の通りです。

項目 年末調整 確定申告
手続きする人 会社 本人
目的 源泉徴収税額の過不足を精算 すべての所得を確定し最終税額を決定
実施時期 年末 翌年2月16日~3月15日
対象者 給与所得者 ・副業をしている給与所得者
・個人事業主
・一定の年金受給者
・寄付金控除などを受けたい人
効果 給与による過不足調整 納税または還付

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不動産所得の計算に必要な項目

この章では、不動産所得の計算に必要な項目について解説します。

収入金額になるもの

不動産所得で収入金額に計上できる項目は、以下の通りです。

▼不動産所得の収入金額として認められる費目

  • 家賃収入
  • 共益費・管理費
  • 駐車場代
  • インターネット使用料
  • 自動販売機設置料

必要経費になるもの

不動産所得を節税するには、必要経費となる費目はしっかりと計上することが鉄則です。
一般的に必要経費として認められるものは、以下のような項目が挙げられます。

▼不動産所得の必要経費として認められる主な費目

  • 公租公課(固定資産税など)
  • 損害保険料
  • 修繕費
  • 入居者募集費用
  • 管理委託料
  • 共用部の水道光熱費
  • 共用設備の維持費
  • 通信費・旅費交通費・接待交際費・新聞図書費・消耗品費(※)
  • ローン保証料
  • 借入金利子
  • 減価償却費

※賃貸経営に必要なものであれば計上可能
例:不動産関連の書籍を購入した場合は、新聞図書費として計上することができる。

また、必要経費の中には借入金の利子は含まれますが、元本は含まれない点がポイントです。 借入金が収入に含まれないのと同じ理屈で、返済した元本も経費にはなりません。

確定申告でできる節税ポイント

確定申告のイメージ

この章では、確定申告で活用できる節税方法について解説します。

要件を満たしていれば青色申告を行う

事業的規模に該当する賃貸物件では、青色申告を行うことで最高65万円の特別控除(青色申告特別控除)を受けられます。 事業的規模とは、アパートや賃貸マンションで部屋数が10戸以上ある物件が該当します。

損益通算を行う

損益通算とは、不動産所得などの損失を他の所得から差し引ける制度です。
たとえば、不動産所得が▲500万円、給与所得が800万円の場合は下記のようになります。

  • 不動産所得:▲500万円
  • 給与所得:800万円
  • 損益通算後の所得:800万円-500万円=300万円

このように、不動産所得が赤字となった年は損益通算で節税が可能です。

経費の根拠資料を残しておく

「通信費・旅費交通費・接待交際費・新聞図書費・消耗品費」といった費目は、家事消費(個人的な消費)と混同されやすい経費です。
これらを必要経費として計上するには、使用記録や領収書などの根拠資料を残しておくことが重要です。 合理的に説明できるものであれば、費用として計上し節税につなげることができます。

まとめ

ここまで、家賃収入と年末調整・確定申告の関係について解説してきました。
サラリーマンであっても、不動産所得が20万円を超える場合は確定申告が必要です。
年末調整を受けている人でも、この条件に該当すれば年末調整とは別に確定申告を行う必要があります。

不動産所得を計算する際は、必要経費を正しく把握し、漏れなく計上することが重要です。 また、確定申告で節税するためには、家事消費と混同されやすい費用について領収書や記録を残し、根拠を明確にすることがポイントとなります。

アパート経営や不動産投資に関するご相談は、下記よりお気軽にお問い合わせください。

この記事のライター・監修者

竹内英二

不動産鑑定士

竹内英二

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、住宅ローンアドバイザー、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。
土地活用と賃貸借の分野が得意。賃貸に関しては、貸主や借主からの相談を多く受けている。

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