アパート経営の収支を改善する方法の一つに、アパートローンの借り換えがあります。 アパートローンの借り換えは、長期的に収支を改善する効果が期待できる点が特徴です。 一方で、アパートローンの借り換えにも落とし穴があり、安易に行うと予期せぬリスクに遭遇することがあります。 アパートローンの借り換えには、どのようなリスクや注意点があるのでしょうか。 この記事では、「アパートローンの借り換え」について解説します。
Point
- 借り換えには、金利を引き下げて返済額を軽減できるメリットがある
- 借り換えをすると、現在の金融機関との信頼関係が崩れるリスクがある
- 借り換えを実行するか否かは、諸費用も含めで検討することが望ましい
-
目次
アパートローンの借り換えによる効果
アパートローンの借り換えとは、現在借りているローンを新たな金融機関で借り直すことです。
アパートローンの借り換えによる主な効果には、以下の3つが挙げられます。
【アパートローンの借り換え効果】
- 金利の引き下げによる返済額の軽減
- 空室に対する耐性強化や修繕に対する対応力の向上
- 団体信用保険のオプションの見直し
借り換えの最大のメリットは、金利の引き下げによる返済額の軽減です。
以下の条件で借り換えによる返済額のシミュレーションを行います。
(条件)
- ローン残債額:1億円
- 残存期間:20年
- 金利:借り換え前は4.0%、借り換え後は1.5%
- 返済方法:元利均等返済
項目 | 借り換え前 | 借り換え後 | 差額 |
---|---|---|---|
金利 | 4.0% | 1.5% | 2.5% |
毎月の 返済額 |
605,980円 | 482,545円 | 123,435円 |
総返済額 | 145,435,138円 | 115,810,779円 | 29,624,359円 |
上記の場合、金利を2.5%引き下げることで、毎月の返済額を123,435円減額できることになります。
キャッシュフローが改善すれば、多少の空室が発生しても耐えやすくなり、また現金も貯まりやすいため、修繕が発生したときの対応もしやすくなります。
さらに、借り換えをきっかけに、団体信用生命保険に付随するオプションの見直しも行うことができます。
アパートローンの借り換えのリスク
この章では、アパートローンの借り換えに伴うリスクについて解説します。
審査に落ちるリスクがある
アパートローンの借り換えには、審査に落ちるリスクもあります。
審査に落ちる理由には、「物件に原因がある場合」と「本人に原因がある場合」の2パターンがあります。
物件に原因がある場合は、たとえば現状のアパートの空室率が高いケースや築年数が古いケースです。 空室率の高いアパートは収益性が低く、また築年数が古ければ担保価値も低いため、銀行からすると貸したお金が返ってこないリスクが強まり、融資をしにくくなります。
本人に原因がある場合は、たとえば本人が高齢であるケースが挙げられます。 銀行によっては完済年齢を定めている金融機関もあり、このような金融機関では年齢で融資審査に通りません。
アパートローンの審査は、銀行によって異なることが特徴です。
対策としては、事前に銀行の窓口でよく相談し、場合によっては仮審査を申し込むことも望ましいといえます。
総返済額が増えるリスクがある
借り換えには諸経費が発生し、諸経費も合わせると総返済額が増えてしまうリスクがあります。
金利の削減幅が小さい場合や、残債が少ない場合、残りの返済期間が短い場合などのケースでは、毎月の返済額が下がっても総返済額が増える逆転現象が起こりやすいです。
対策としては、諸経費も含めた総返済額も比較したうえで判断することがポイントとなります。
返済期間が短くなるリスクがある
アパートローンの借り換えでは、借り換えを行うことで逆に返済期間が短くなってしまうリスクがあります。
例えば、現在のローンの残存期間が15年であった場合、借り換えを行った結果、残存期間が10年になってしまうケースです。 この場合、金利が下がったとしても、返済期間が短くなれば毎月の返済額が増えてしまいます。
アパートローンは、各金融機関が独自に最長期間を30年や35年といった形で決めていることが多いです。 借り換えで決まる返済期間は、元の銀行で借りていた当初の借入日からカウントされることが一般的となっています。 例えば、現在の銀行で35年ローンを借りている人が、10年目に最長期間を30年とする銀行で借り直した場合、残存期間が25年ではなく20年になるということです。
対策としては、 金利の安さだけに注目して決めるのではなく、返済期間の変更がないことを確かめることがポイントとなります。
変動金利は金利上昇リスクがある
変動金利は、将来的に金利が上昇するリスクがあります。
金利には主に「固定金利」と「変動金利」の2種類がありますが、一般的に変動金利の方が固定金利よりも安くなります。
借り換えは、金利を下げることを目的に行うことが一般的であるため、金利の低い変動金利を選ぶ人が多いです。 日銀は2024年3月にマイナス金利政策を解除して以降、金利は徐々に上がっており、今後も金利は上がる可能性が十分にあります。
アパートローンは、金利の低い順に並べると、都市銀行、地方銀行、信金・信組となります。
対策としては、可能であれば金利の安い都市銀行もしくは地方銀行に借り換えることが望ましいです。
今の金融機関との信頼関係が崩れる
アパートローンの借り換えを行うと、今の金融機関との信頼関係が崩れるリスクがあります。 信頼関係が崩れれば、今後、情報を気軽に聞けなくなったり、新規の融資を断られたりする懸念が生じかねません。
対策としては、借り換えを実行する前に、まず今の銀行と金利を下げる交渉を行うことが考えられます。 今の銀行で金利を下げることができれば、借り換えに伴う諸費用が発生しない点もメリットです。
アパートローンを借り換える際の注意点

この章では、アパートローンを借り換える際の注意点について解説します。
期間延長は基本的にできない
返済期間を伸ばすと毎月の返済額が減るため、返済期間の延長を目的に借り換えを検討している人もいると思います。 しかしながら、借り換えによる期間延長は、銀行側にとって将来の不確実性リスクが増すことから、認められないケースがほとんどです。
一部の地方銀行やノンバンクでは、期間延長を認めている場合もありますが、金利や返済期間などを総合的に考えると、必ずしもメリットがあるとは限りません。 そのため、アパートローンの借り換えでは、期間延長に固執しないことが望ましいです。
残債や返済期間で効果が異なる
借り換えの効果は、ローン残債が少ない場合や、残りの返済期間が短い場合には薄くなります。 目安としては、残債が1億円以上、返済期間が20年以上残っていることが、効果が見込める基準とされています。 また、金利に関しても、借り換え前後で2%以上の差があることが望ましいといえます。
諸費用が発生する
アパートローンの借り換えでは、以下のような諸費用が発生します。
【借り換えに伴う諸費用】
- 一括返済手数料
- 事務手数料
- 登記費用
- ローン契約書で生じる印紙税
これらの諸費用は、数十万円単位で発生することが一般的です。
借り換えをすべきかどうかは、こうした諸費用も総返済額に加算したうえで、慎重に比較・検討することが適切となります。
まとめ
以上、アパートローンの借り換えについて解説してきました。
アパートローンの借り換えには、「総返済額が増える」「返済期間が短くなる」「今の金融機関との信頼関係が崩れる」といったリスクがあります。 安易に借り換えを行うのではなく、十分なシミュレーションを行ったうえで、慎重に意思決定することが大切です。
アパート経営に関するご相談は、下記よりお気軽にお問い合わせください。
この記事のライター・監修者

不動産鑑定士
竹内英二
不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、住宅ローンアドバイザー、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。
土地活用と賃貸借の分野が得意。賃貸に関しては、貸主や借主からの相談を多く受けている。
竹内英二さんの記事一覧
CONTACT
まずは気軽にご相談ください

- 相続の悩みを聞いてほしい!
- 土地活用について
相談したい! - 事業継承について
相談したい!
お電話でのご相談・
お問い合わせ
受付時間 10:00~17:00(水曜・日曜定休)