不動産の賃貸経営における消費税還付とは?受けられるケースと注意点を解説

トチカツplus

2025.09.18

この記事のライター・監修者

竹内英二

不動産鑑定士

竹内英二

不動産の賃貸経営においても、一定の条件を満たせば消費税の還付を受けられるケースがあります。 ただし、アパートなどの居住用建物とオフィスビルなどの非居住用建物では、消費税還付のルールが大きく異なるため注意が必要です。 「消費税の還付が受けられる」と思っていても実際には受けられないケースもあるため、アパートなどの賃貸経営者は制度の仕組みを十分に理解することが望ましいといえます。 この記事では、「不動産の消費税還付」について解説します。

Point

  • 消費税還付とは、一定の要件を満たすと税金の還付を受けられる制度
  • 対象建物は、オフィスビルなどの課税売上を生む建物のみ
  • 解体や新築・購入した不動産でも消費税の還付を受けられる可能性がある

目次

  1. 消費税還付とは
  2. 不動産と消費税の基本的ルール
  3. 消費税還付を受けることができる条件
  4. 賃貸経営で消費税還付が受けられるケース
  5. 居住用賃貸建物を解体したときの注意点
  6. まとめ

消費税還付とは

消費税還付とは、課税事業者が仕入れ先などに支払った「支払い消費税」が、顧客から預かる「預かり消費税」を上回るときに、その差額を国から返してもらえる制度です。

課税事業者とは、法人や個人を問わず、基準期間の課税売上高が1,000万円を超える事業者を指します。 基準期間は、法人なら原則前々事業年度、個人事業主なら前々年です。
個人の不動産賃貸経営者も、一定の要件を満たせば課税事業者に該当します。

消費税は、本来、課税事業者が「預かり消費税」と「支払い消費税」の差額を国に納める仕組みです。 預かり消費税と支払い消費税の差額がプラスであれば納税となりますが、マイナスであれば還付を受けることになります。
つまり、個人の不動産賃貸経営者であっても、支払い消費税が預かり消費税を上回れば、消費税の還付を受けられるということです。

不動産と消費税の基本的ルール

不動産は、消費税のルールが若干複雑です。 用途や売り主によって、消費税が課税される「課税取引」と消費税が課税されない「非課税取引」が存在します。
消費税の課税取引と非課税取引をまとめると、下表の通りです。

取引 課税取引 非課税取引
賃貸 事業用建物の家賃
事業用建物の共益費
事業用建物で返還しない一時金
駐車場※
住宅の家賃
住宅の共益費
住宅の礼金・更新料
敷金
土地の地代
売買 マイホーム以外の建物 土地
マイホームの建物

右にスクロールできます→

※賃貸住宅で1戸につき1台以上の駐車場が付属し、駐車場代を賃料に含めて受領する場合は非課税取引となる

課税取引で生じる売上を「課税売上」、非課税取引で生じる売上を「非課税売上」と呼びます。
例えば、オフィスビルや店舗の家賃収入は課税取引のため課税売上です。 一方、アパートや賃貸マンションの家賃収入は非課税取引に該当するため、非課税売上となります。

消費税還付を受けることができる条件

消費税還付を受けることができる条件

消費税還付を受けるには、一定の条件を満たす必要があります。
この章では、消費税還付を受けるための基本的な条件について解説します。

課税事業者であること

消費税還付を受けるためには、課税事業者であることが前提となります。
課税事業者とは、法人・個人を問わず、基準期間の課税売上高が1,000万円を超える事業者のことであるため、個人の賃貸経営者であっても課税事業者になり得ます。

例えば、オフィスビルの家賃収入が1,000万円を超える場合は課税事業者です。 一方、賃貸マンションの家賃収入が1,000万円を超えても、住宅家賃は非課税売上であることから非課税事業者となります。

課税売上を判断するのは「基準期間」で、法人なら原則前々事業年度、個人事業主なら前々年です。 そのため、初めて不動産投資を行い事業用建物の家賃収入が初年度から1,000万円を超えていたとしても、初年度は課税事業者にはならず、3年目に課税事業者となります。

簡易課税を選択していないこと

消費税還付を受けるには、簡易課税を選択していないことも条件となります。
簡易課税とは、課税売上に一定の率を乗じて支払消費税を計算できる制度で、基準期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者が選択できます。

不動産賃貸業を行っている人は、比較的、簡易課税を選択しているケースが多いです。
なお、簡易課税を選択している場合は、支払い消費税が預かり消費税を上回っていても、消費税還付を受けることはできません。

対象が課税売上を生む建物であること

不動産の消費税還付には、建物が課税売上を生むことが条件です。
2020年4月以降の法改正により、アパートなどの居住用賃貸建物の取得 (新築や購入を含む)では、消費税還付を受けられなくなりました。 つまり、課税売上を生まない建物の仕入れにかかる支払い消費税は控除できません。

改正前は、課税事業者がアパートを新築・購入する場合、建築費や購入費にかかる消費税の還付を受けられるケースが多くありました。 しかし、一部オーナーによる還付の悪用を受け、居住用賃貸建物では消費税還付できないルールに変更されたのです。

賃貸経営で消費税還付が受けられるケース

賃貸経営において、消費税還付が受けられる代表的なケースを解説します。

建物を解体した場合

建物の解体費用には、消費税が発生します。
解体費用が大きい場合、支払い消費税が預かり消費税を上回ることが多く、還付を受けられる可能性があります。

建物を新築した場合

オフィスビルや店舗などの非居住用賃貸建物を新築した場合も、支払い消費税が預かり消費税を上回ることがあります。
課税事業者であるなど、他の条件を満たしていれば消費税還付を受けられます。

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新たに物件を購入した場合

新たに非居住用賃貸建物を購入した場合、建物代金に消費税が発生します。
購入金額が大きい場合、支払い消費税が預かり消費税を上回り、還付を受けられるケースがあります。

居住用賃貸建物を解体したときの注意点

解体は新築や購入ではないため、アパートなどの居住用賃貸建物を解体した場合でも、他の条件を満たしていれば消費税還付を受けられるケースがあります。
例えば、アパートを解体して駐車場にしたり、店舗やオフィスビルを建てたりなどの課税売上を得る目的で解体した場合には、消費税の還付を受けられます。

一方、アパートを解体してすぐにアパートなどの居住用賃貸建物を建てる場合は、消費税還付を受けられません。 ポイントは、解体後の利用方法が課税売上を生むかどうかで、消費税還付の適用が変わることです。 消費税還付には細かい要件があるため、とくにアパートなどを解体する場合には、税理士に十分に相談することをおすすめします。

まとめ

以上、不動産の消費税還付について解説してきました。
消費税還付とは、支払い消費税が預かり消費税を上回る場合に、差額を国から返してもらえる制度です。

消費税還付を受けるには、課税事業者であり、かつ簡易課税を選択していないことが基本的条件です。 また、建物は原則として課税売上を生む建物であることが必要です。
賃貸経営で消費税還付が受けられる代表的なケースは、建物の解体、新築、購入などです。

オフィスビルなどの建て替えで消費税還付の可能性を検討している方は、下記よりお気軽にご相談ください。

この記事のライター・監修者

竹内英二

不動産鑑定士

竹内英二

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、住宅ローンアドバイザー、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。
土地活用と賃貸借の分野が得意。賃貸に関しては、貸主や借主からの相談を多く受けている。

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