自分でできる賃貸需要の調べ方と外してはいけない5つの注意点

トチカツplus

2025.07.15

この記事のライター・監修者

竹内英二

不動産鑑定士

竹内英二

賃貸需要とは、誰がどのような建物をいくらで借りるかというニーズのことです。 賃貸経営を成功させるためには、賃貸需要の見極めは重要といえます。 しかし、賃貸需要は明確な数値で定量的に把握できるものではありません。 賃貸需要は、複数の情報を考慮しながら、総合的に強弱を判断するものです。 では、賃貸需要の調べ方と注意点には、どのようなものがあるのでしょうか。 この記事では、「賃貸需要」について解説します。

Point

  • 賃貸需要は「住宅市場動向調査」や「日管協短観」で概要を把握できる
  • 人口動向は、分譲と賃貸の違いを意識することが注意点となる
  • ある程度把握したら、早めに不動産管理会社に相談することがおすすめ

目次

  1. 賃貸需要の調べ方
  2. 賃貸需要を調べるにあたっての5つの注意点
  3. まとめ

賃貸需要の調べ方

最初に、賃貸需要の調べ方について解説します。

住宅市場動向調査で基本を知る

「住宅市場動向調査報告書」とは、国土交通省が毎年公表している住宅に関するアンケート調査です。 この調査では、さまざまな住宅に関する調査が行われていますが、民間賃貸住宅に関しても調査が行われており、賃貸需要における基礎的な動向を知ることができます。
ここでは、民間賃貸住宅に関する基礎的な3つの調査結果を紹介します。

賃貸住宅の選択理由

賃貸住宅の選択理由の調査結果を示すと、以下の通りです。

順位 項目 割合
1位 家賃が適切だったから 51.1%
2位 住宅の立地環境が良かったから 32.1%
3位 住宅のデザイン・広さ・
設備などが良かったから
30.1%
4位 交通の利便性が良かったから 30.1%
5位 職場から近かったから 20.9%

賃貸住宅を決めた理由は、1位が「家賃が適切だったから」です。
家賃が1位なのは、ほぼ毎年の傾向であり、借り主を決めるうえでは家賃が適切であることが最も重要といえます。

賃貸住宅に住む人の年齢と居住人数

次に、賃貸住宅に住む人の年齢と居住人数を示します。

▼年齢分布

順位 項目 割合
1位 30歳未満 32.5%
2位 30歳代 24.0%
3位 40歳代 19.3%
4位 50歳代 12.8%
5位 60歳以上 10.2%

▼居住人数

順位 項目 割合
1位 1人 38.7%
2位 2人 34.7%
3位 3人 14.7%
4位 4人 7.8%

上記2つのデータから言えることは、賃貸需要の主たるターゲットは、「40代未満」の「単身者」もしくは「2人世帯」であるということです。

日管協短観で最新動向を知る

日管協短観とは、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会日管協総合研究所が毎年公表している、管理会社に対して行ったアンケート調査です。 日管協短観は、プロの目線から見た市場動向を知ることができます。

たとえば、2023年度における全国の成約賃料の動向を示すと、下表の通りです。

間取り 増加 変化なし 減少
全体 50.6% 38.2% 11.2%
1R~1DK 38.8% 46.5% 15.5%
1LDK~2DK 46.5% 46.3% 7.2%
2LDK~ 46.1% 44.6% 9.3%

出典:公益財団法人日本賃貸住宅管理協会日管協総合研究所 「日管協短観 2023年度データ

全体としては5割以上の物件の家賃が増加しているため、近年は家賃が増加傾向にあります。
また、「1R~1DK」よりも「1LDK~2DK」や「2LDK~」のような2人世帯以上向けタイプの方が、家賃の上昇傾向が強いです。

家賃指数で家賃のトレンドを把握する

家賃指数とは、全国の住宅の家賃の値動きを指数化したものです。
家賃指数は、総務省が公表している消費者物価指数の1つになります。

参考までに、過去15年間における地価公示と家賃指数の推移を示します。
地価公示とは、国が毎年行っている土地単価の調査のことです。

地価公示と家賃指数の15年推移
地価公示と家賃指数の15年推移

出典:国土交通省 「地価公示
出典:政府統計の総合窓口(e-Stat) 「消費者物価指数

地価は2013年より上昇し始めていますが、家賃指数は2020年から上昇し始めています。
ポイントとなるのは、家賃指数は地価の動きに遅れて動くという点です。

今後、何らかの理由により地価は下落する可能性はありますが、家賃は地価に遅れて動くため、地価が下落しても家賃まですぐに下落するわけではないといえます。

不動産情報ライブラリで人口動向を調べる

不動産情報ライブラリとは、2024年4月から国土交通省が運用し始めた不動産情報サイトのことです。 不動産情報ライブラリを用いると、地図上から将来の推計人口を簡単に調べることができます。

不動産情報ライブラリで人口動向を調べる

出典:国土交通省 「不動産情報ライブラリ

▼不動産情報ライブラリの使い方

  • 不動産情報ライブラリのサイトにアクセスする
  • 画面右上にある「人口情報等」で「将来推計人口250mメッシュ」を選択する
  • 地図上で調べたい場所をクリックすると人口の予想が表示される

今後は日本全体が人口減少に突入するため、人口増加地域は少ないですが、減少が緩やかに進む地域は把握することができます。

ニュースを参考にする

賃貸需要は、ニュースも極めて参考になります。 たとえば、最近は首都圏でファミリータイプ向けの分譲マンションの価格が上昇したことから、購入を諦めて賃貸を選択する人が増えてきたというニュースがありました。

日管協短観でも、ワンルームよりも2人世帯以上向けの間取りの方が賃料は上昇している傾向が生じています。 ニュースは統計資料よりも即時性が高いため、傾向を早く知るのに適した情報です。

土地活用提案のできる不動産コンサルティング会社に相談する

もっと具体的な形で賃貸需要を知りたければ、不動産コンサルティング会社やハウスメーカーに土地活用の提案を依頼することが有効です。 土地活用のプロに相談すると、設計士による賃貸需要のトレンドを考慮したプランや、管理会社の意見も踏まえた現実的な賃料設定を知ることができます。

自分の土地にどのような需要があり、いくらの投資をすればどれくらい稼げるのかを具体的に把握することができます。

スターツの企画・提案|詳しくはこちら >

賃貸需要を調べるにあたっての5つの注意点

賃貸需要を調べるにあたっての5つの注意点

この章では、賃貸需要を調べるにあたっての注意点について解説します。

基本的な傾向から逸脱しない

賃貸需要を知るには、基本的な傾向から逸脱しないことが注意点です。
賃貸需要の基本傾向として、賃貸需要は「利便性の高い場所が強い」または「若者の単身世帯または2人世帯が強い」といったことが挙げられます。

そのため、たとえば駅から離れた不便な場所でファミリー向けの賃貸需要を探ろうとしても、有益な情報は得にくいといえます。

人口動向は分譲と賃貸の違いを意識する

人口動向を分析する際は、分譲と賃貸の違いを意識することが注意点です。 たとえば、大型マンションが建ったり、戸建て住宅街の大規模開発が行われたりすると、一定の地域で急激に人口が増えることがあります。 しかしながら、急激な人口増加は分譲需要に基づくものであり、賃貸需要はとくに増えていないことも多いです。

賃貸需要は、駅から近い利便性の高い場所で安定的・継続的に存在するものであり、急に増えたり減ったりするものではありません。 そのため、人口動向を見る際は、増えた原因が分譲によるものかどうかを見極める必要があります。

周辺環境も考慮する

賃貸需要は特定の範囲で変化するため、周辺環境を併せて考慮することが注意点です。 たとえば、同じ駅でも食品スーパーが「ある側」と「ない側」では、賃貸需要ががらりと変わることがあります。 また、大きな道路や線路を渡った先が、急に賃貸需要が弱まることも少なくありません。

そのため、駅から物件までの間に賃貸需要を減退させる要因がないかどうか、実際に現地を歩いて確認することが望ましいといえます。

賃料単価は間取り別に把握する

賃料単価を把握する際は、間取り別に把握することが注意点です。 一般的に賃料単価は、ワンルームの方がファミリータイプよりも高くなる傾向があります。
賃料が高いか安いかを判断する際には、同じ間取り同士で比較することがポイントです。

早めに不動産管理会社に相談する

賃貸需要については、自分だけでは判断しにくい部分も多いため、詳しく知りたければ早めに専門の会社に相談することが適切です。

特に不動産管理会社なら、周辺の地域でどのようなターゲット層が、どのくらいの家賃の物件を求めているのかといった具体的な情報を教えてくれます。 専門家の視点を利用することで、より正確な市場分析ができ、効果的な土地活用が実現しやすくなります。

スターツグループの土地活用|詳しくはこちら >

まとめ

以上、賃貸需要について解説してきました。
賃貸需要は、住宅市場動向調査や日管協短観、家賃指数などの資料からもある程度把握することができます。 しかし、より詳しく知りたいと思ったら、専門の会社に土地活用の相談をすることが望ましいです。

賃貸需要についてのご相談は、下記よりお気軽にお問い合わせください。

この記事のライター・監修者

竹内英二

不動産鑑定士

竹内英二

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、住宅ローンアドバイザー、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。
土地活用と賃貸借の分野が得意。賃貸に関しては、貸主や借主からの相談を多く受けている。

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